みんなの外壁塗装ガイド
本当にあった外壁塗装業者の怖い話「今さらクーリングオフできませんよ!」
公開日:2018/01/11 / 最終更新日:2021/07/01
「まさか自分がこんなトラブルに巻き込まれるとは!」
工事・施工業者のトラブルは、実は誰にでも起こりうることです。
どの会社に工事を依頼するかは、重要な決断。中には、怪しい業者も存在するので、きちんと見極めることが大切です。
特に注意すべきは、訪問販売です。お得な価格や待遇を示され、もしかしたら悪徳業者かもしれないと疑う間もなく、つい契約を交わしてしまう…。
これはとても危険な判断です。
取り返しのつかない事態に陥る前に、正しい目を持ち、トラブルを未然に防ぐことができるでしょうか。また、トラブルが起こった後でも、最悪の事態を回避する知識を持っているかどうかで明暗が分かれます。
住宅のメンテナンスをお考えの方は必見。本当にあった外壁塗装屋さんの怖い話をお届けします。
外壁塗装業者から突然の電話
わが家の近くに、新しい住宅団地が開発されました。そこに立ち並ぶ家々は、壁や屋根に新しい建材が使われ、デザインもさまざまです。まるで、テレビドラマや映画で見るようなおしゃれな雰囲気が漂っています。
それに比べて、25年ほど前に開発された住宅団地にあるわが家と周辺の家々は、やはり見劣りします。できることなら新しい団地に住み替えたいですが、住宅ローンが7、8年残っていて、2人の子どもの教育費もかさむようになりました。妻はパート勤めで頑張ってくれていますが、住み替えるほどの余裕はありません。
また、今の家の立地条件が大変気に入っているのも、簡単に動く気持ちになれない理由の1つです。高台に位置するわが家からは、冬の朝、西の地平に真っ白な富士山が見えます。
夕方、赤い夕陽をバックに浮かび上がるシルエットも素晴らしい眺めです。東京スカイツリ―なども毎日毎晩見ることができます。
ですから、理想は今のこの土地で家を建て替えることです。そう思い、たまにジャンボ宝くじなどを買いますが、毎年のお年玉付き年賀はがきでさえ当選したことのない私に、くじ運があるはずはありません。
そんなある日、たまたま有給休暇を取って家にいたときに、1本の電話がかかってきました。
受話器を取ると明らかに中年女性の声で、外壁塗装の案内でした。こうした電話はたまにあるのですが、中年の女性は珍しく、非常に自然で親しみやすい話し方なので、何となく電話を切りかねて話を聞きました。
その内容は、
- 今キャンペーン中で、私の住む地域でモニターを探している
- モニターになると外壁塗装費をおよそ30%値引きしてくれる
- 塗装は3回塗りを徹底している
というものでした。
彼女はひとしきり話し終えると、無料なので現地調査の上、見積もりだけでも取らせてもらえないかと迫ってきました。もちろん、その結果が気に入らなければ、遠慮なく断ってもらって構わないとのこと。
私はそれならと承諾してしまいました。
そのとき、心のどこかでもう一人の自分が、「何事につけ疑り深くて慎重なお前にしては珍しいことだな」とささやきかけました。
一方では、キャンペーン中やモニター扱いで30%値引きといった言葉に気持ちが動き、調査の結果が納得できなければ断って済むと思いました。
実はその頃、「新しい住宅を手に入れるのが無理なら、せめて外壁だけでも塗り替えてきれいにしたい。また、東日本大震災の影響でクラック(ひび割れ)が目立ち始めた壁の手入れも必要だ」と考えていました。
ですから、その電話は良いタイミングでかかってきたといえます。そして潜在的には、新しい住宅団地のきれいな家々への対抗心が、少しばかりあったかもしれません。
下見と見積もりをしにやってきた
電話で約束した日時に遅れることなく、30代後半くらいの男性が下見と見積もりのためにわが家に訪問してきました。あいさつもちゃんとしていて、きちんと作業服を着た姿がとても好印象でした。
私は最近、紺のスーツ姿の方に疑いを抱くようになっています。オレオレ詐欺の受け子たちは、紺のスーツで現れる話をよく聞くからです。
引用:日本コロムビア
その男性は、歌手の新沼謙治にそれとなく似ていました。言葉もどこかなまっています。多分、東北なまりでしょう。
そんな新沼謙治に似た彼を、私は信用できそうだと思ったのです。
見積もりは2日後にその男性が持参しました。それを見ると、
- 約32坪のわが家の外壁塗装の総額は92万円
- そこからキャンペーン中のモニターとして3割の27万円を値引き
- 16万円の足場代は特別にサービス
という内容でした。
しかも、3日以内に塗装するかを決めてくれたら、さらに5万円値引きすると言われたのです。
外壁塗装は以前に一度、私の友人に紹介された信用ある業者にやってもらっただけで、ほとんど知識もなく、訪問に来たスタッフの説明をうのみにして契約することに決めました。
業者と取り交わした契約は、総額で約60万円でした。前回の外壁塗装は75万円かかったことから、とても安く感じました。また、相場は80万~90万円と聞いていたので、本当に上手な買い物をしたような気分でした。
すでに頭の中では、塗り替えられて美しく輝くわが家のイメージが出来上がっています。久しぶりに気持ちが高揚し、いつの間にか新沼謙治のヒット曲「嫁に来ないか」のメロディを口ずさんでしました。
ところが、それはつかの間の幸せに過ぎなかったのです。
え!?今時こんな足場を設置するの?
最初に不安を抱いたのは足場でした。外壁塗装時は、家の周りに足場を設置しなければなりません。通常は、まず足場パイプが縦に立てられ、その水平に網状の足場板が載せられます。これなら職人たちが歩きやすく安全で、仕事に集中できます。
ところが、今回の足場には網状の足場板がなく、縦に使っている足場パイプと同じパイプが2本、足場板の代わりに水平に渡されているだけでした。もし、職人が足を滑らせたら転落をまぬがれません。塗装作業に身が入らないのではないのかと、見ているこちらが心配になってきます。
そこで、私は業者に電話を入れて、新沼謙治似の担当者に尋ねてみました。すると相手の言い分は、
「値段を相当勉強させてもらったので、その分どこかでコストを落とす必要があり、そのような足場となった。こちらはそうした努力によって、お客様になるべく安い価格で提供できるよう工夫している」「塗装作業はうちの熟練の職人がやるから心配ない。迷惑を掛けることはないので、どうかそうした努力を買って、その方法でやらせてほしい」
というものでした。
そう言われると、それ以上は抗議する気持ちになれませんでした。そうした努力で価格を安くしていると言われれば、足場代の設置が通常より簡易的なものは仕方ないかなと思いました。職人さんもそれでいいなら、こちらがどうこう言えるものでもないと、無理に納得したのです。
心のどこかでもやもやを感じながら、その場はとにかく気持ちを抑えました。
納得のいかない職人たちの態度
そうして作業は進んでいきました。足場にネットが掛けられ、壁の洗浄が終わり、壁のクラックや微小な傷がコーキングなどで補修されました。その頃はもう、足場が気になることはありませんでした。
ところが会社から帰宅した私に、妻が職人たちのことを愚痴をこぼすようになりました。職人の態度が良くなく、タバコの吸い殻をあちこちに投げ捨てたり、休憩時間が長かったり、大声で下品な冗談を飛ばしたり、時には酒臭かったりして、とても感じの悪い人が多いというのです。
その話を遅い夕食を取りながら聞かされた私は、次第に気持ちが落ち込んでいきました。同時に、仕事中の不愉快な問題や不都合までが思い出されて、気分が滅入ってきました。
妻は、近所の人にも恥ずかしいから、業者の担当者に電話で抗議してほしいと言います。
妻の言うことは最もですから、私は翌日さっそく新沼謙治似の担当者に対し、少し厳しい口調で抗議しました。
すると相手は、ただ「申し訳ありません。よく注意します」と繰り返すばかりでした。
受話器を置いた私は、本当に分かっているのかな…と首をかしげました。足場の件といい、職人の態度といい、今後も何か起こりそうな予感がしたのです。
これが三度塗りといえるの!?
いよいよ塗装が始まりました。当日、代休を取った私は、ときどき表に出て塗装作業を見守りました。
1回目の塗装では、壁に塗られていた透明な塗料が何か職人に聞くと、シーラーとのことでした。下地を整え、後で上に塗る塗料の密着性を高める働きをすると説明され、私はなるほどと感心しました。
そして、2回目の塗りも無事に終わりました。私はそれが乾いたら、いよいよ3度目の塗装だと思っていました。妻も私も、完成が近づいていることに期待を膨らませていたのです。
ところがその翌日、会社に妻から電話が入り、足場の解体が始まったと言うのです。驚いた私は、職人さんを電話口に呼んでもらい理由を聞きました。
すると相手は、「私たちは業者の指示に従っているだけで、詳しいことは分からない」と言います。
そこで私は、自分が業者に電話して確かめるので、今は足場をそのままにしておいてほしいと頼みました。
さっそく新沼謙治似の担当者に電話を入れて、事情を確認しました。以下は、その電話でのやりとりです。
私:もしもし、○○さんですか。実は今、会社に妻から電話があってね。足場の解体が始まったと聞いたんですよ。どういうことなのかなー、3回塗りだから、もう1回塗らないと足場は外せないでしょう。
業者:いえ、もう3回塗ったので塗装は終了です。ですから足場は撤去させてもらっています。
私:(ちょっと慌てて)終わってる?そんなわけないでしょう。誰が見たって2回でしょ。あれでどうして3回塗ったと言えるの?
業者:違うんですよ。うちの基準では、2回目のときにローラーを最低でも2回以上往復させて塗ることを3回塗りと決めているんですよ。実際には、3~4回ローラーを往復させているので、4回塗り、5回塗りと言ってもいいくらいなんですよ。
会社の電話で話していただけに、部下たちの聞き耳が気になり出した私は、いったん電話を切ることにしました。背中に部下たちの視線を痛いほど感じながら、事務所の外に出て携帯電話でかけ直しました。
私:もしもし、そんなのないでしょう。オレはね、確かに塗装には詳しくないよ。でもね、普通3回塗りと言われたら、誰もがいったん乾いてから、そこにもう一度塗り重ねると考えるのが常識でしょう。
2回目のときに同じ箇所をローラーで何度も塗ったから、それを塗る回数に含めるなんておかしいよ。
業者:(語気を強めて)でも、うちはそういうやり方なんです。
私:どーも安いと思ったんだよね。塗りだけでなく、足場にしても職人の態度にしても。安かろう悪かろうでは、納得いかないね。
そしてあなたは工事が始まってから、一度もこっちに顔を出したことがないでしょう。まったく無責任だよね。明日、こっちへ来てくれる?
こうしたやりとりがあった翌日、新沼謙治似の担当者がわが家にやって来て話し合いました。
しかし、お互いの言い分は平行線をたどるばかりで、一向にらちが開きません。現場は足場を外しかけたまま中断された形となり、私はどう対処したらよいのか分かりませんでした。
すると、先日の電話のやりとりを聞いていた同じ職場の部下が、解決策を提案してくれました。
国民生活センターへ相談
私の職場の部下が提案した解決策は、「国民生活センター」に相談することでした。部下は、非は明らかに業者側にあり、国民生活センターに仲介に入ってもらえば、こちらの言い分が認められて事態が好転するのではないかというのです。
そうした窓口があることを知っていたものの、まさか自分が相談する立場になるとは思っていなかった私は、さっそく国民生活センターを訪れました。
この件を担当してくれた国民生活センターの職員に詳しく説明したところ、私が考えていたことが間違いない確証が得られました。やはり、外壁の3回塗りとは、いったん壁が乾いてから3度塗り重ねる意味であり、ローラーを2回往復させることを3回とは数えない判断が示されたのです。
国民生活センターの職員の提案により、塗装業者をセンターに呼び、私を含めた3人で話し合って解決を図ることになりました。
以下は、その話し合いを再現したものです(国民生活センターの仲介職員を「センター」とします)。
センター:○○さんの主張には大きな間違いがあります。外壁の3回塗りとは、あくまで塗るたびに乾燥させ、乾燥した後に塗り重ねることをいいます。
単にローラーはけを動かしただけでは、回数には含まれません。ですから、今回のケースは注文主さんの主張が正しいと思います。
業者:そうですか。でも、うちはそのやり方でやっていますし、そもそも契約書を見てもらえば分かると思いますが、どこにも3回塗りとは書いていませんよね。
私:それはないでしょう。最初の勧誘電話の説明でも、3回塗りとはっきり言っていましたし、あなたもそう言っていたはずですよ。
業者:ちょっと記憶にないのですが……。
私:ずいぶん無責任な言い方だね。私はね、今からでもクーリングオフにしたいくらい怒ってるんだよ。最初の足場にしても、職人の態度の悪さにしても。
業者:今さら何をおっしゃるんですか。クーリングオフっていうのはね、契約してから8日以内とちゃんと法律で決められているんですよ。
納得いかないなら、今ここで国民生活センターさんに聞いてみてくださいよ。今さらクーリングオフなんて、できませんよ!
しばらく無言の時が流れました。そして業者の主張が正しいと思われかけたとき、国民生活センターの職員が契約書を見ながらこう言ったのです。
センター:いや、できないことはありませんよ。
業者:えっ!
センター:この契約書を見てください。日付欄を見ると、日付が入っていませんよね。あなたがおっしゃっている法律的な見地から言えば、契約書に日付が入ってないと、契約は最初から成立しませんよ。
ですから、今からでもクーリングオフができないことはないのです。
業者:……。
新沼謙治似の担当者は言葉を失ってしまいました。
示談の成立
こうして、国民生活センターの仲介により示談に持ち込むことになりました。私は、国民生活センターの職員の一言で溜飲が下がり、それまでのわだかまりが一挙に消えました。
むしろ気の毒なのは新沼謙治似の担当者でした。彼にとってはそれが会社の一般的なやり方であり、本人に罪の意識はあまりなかったようです。外壁工事はもう1回塗ればよいだけの、ほぼ完成に近い状態だったので、今さらクーリングオフの権利を振りかざす気にもなれませんでした。
業者側と話し合った結果、見積額の60万円のうち45万円を支払い、3回目の塗装は、私が選定した他の信用できる業者に依頼することで決着しました。その別の業者には20万円でやってもらい、少し予算をオーバーしたものの、無事全てを終えることができました。
反省点
その後、外壁塗装についてインターネットなどで調べて、今回の業者のやり方が悪徳業者のよく使う手口であることを知りました。
ネットには、以下のような注意喚起が記載されていました。
- 訪問販売に気をつけること
- 大幅な値引きをする業者は怪しいこと
- キャンペーン中やモニター扱いなどの言葉には乗らないこと
そして、事前によく調べてから業者を選ばないと、大きな間違いを犯す結果になることを身に染みて感じたのです。
それにしても、あの新沼謙治似の担当者は社長にこっぴどく叱られたに違いありません。「天網恢恢(てんもうかいかい)疎(そ)にして漏らさず」――天の神様が悪を見逃がすことは絶対ないということわざが、真実味を帯びて私の心に浮かびました。
クーリングオフ及びいえふくのクーリングオフ制度については、以下で詳しく解説しておりますのでご覧ください。
「クーリングオフ制度について」
悪徳業者を避けるには契約書の確認が重要!
大切なマイホームの塗装を、大金を払って任せるのですから、悪徳業者はできるだけ避けたいところですよね。
「この業者に自宅の外壁塗装を任せても大丈夫か」を判断するときに重要になるのが、契約の際に交わす書類の確認です。
外壁塗装の業者と塗装工事の契約を結ぶときには、
- 必要な全ての書類がそろっているか
- 記載されておくべきことが全て書類に記載されているか
などのチェックポイントをきちんと確認しておく必要があります。
外壁塗装の契約においてのチェックポイントや注意点は、こちらの記事で紹介しています。ぜひご一読ください。