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漆喰の外壁でナチュラルな住まいづくり!特徴とお手入れ方法
公開日:2019/01/09 / 最終更新日:2021/06/24
外壁の仕上げ材として古くから利用されてきた漆喰には、多くの長所があります。
サイディングが主流の現在ではあまり見かけない外壁材ですが、健康や環境に優しい天然素材を取り入れた家づくりをしたい人からは、今でも根強い支持を受けています。
ただし、漆喰の外壁と外壁の主流であるサイディングでは、特性やお手入れ方法が大きく異なります。
後から「やっぱり漆喰は止めるべきだった」と後悔しないためにも、漆喰の特徴をよく理解した上で採用するべきでしょう。
この記事では、漆喰の外壁を検討している方に向けて以下の情報をまとめました。
- 漆喰外壁の特徴とメリット、デメリット
- 漆喰外壁に生じるトラブルの種類
- DIYでできる漆喰外壁のメンテナンス
- 漆喰外壁のリフォーム
漆喰のお手入れ方法や劣化症状、メンテナンス方法を知り、外壁を漆喰仕上げにするか検討する際の参考にしてください。
漆喰外壁の特徴
この章では、漆喰の特徴や外壁の仕上げに漆喰を用いるメリットとデメリットを紹介します。
漆喰の概要
漆喰とは、石灰岩から作られる消石灰(水酸化カルシウム)※に糊やスサ※を練り混ぜた外壁の仕上げ材です。
漆喰の主成分である水酸化カルシウムは、空気中の二酸化炭素を吸収しながらゆっくり時間をかけて石灰岩と同じ炭酸カルシウムに戻り、硬度が増します。
主成分が無機物なので、紫外線で劣化せず高い耐久性を誇ります。
主成分の水酸化カルシウムがアルカリ性であることから、汚れにくく抗菌性もあるのです。
漆喰の歴史は古く、飛鳥時代の古墳ではすでに外壁材として漆喰が使用されていました。
耐久性や防火性の高さから、武家の城や町人の蔵といった幅広い建造物に利用されてきた歴史があります。
※消石灰:石灰岩を焼いてできる生石灰(きせっかい)に水をかけたもの。
漆喰には生石灰の製造時に塩を混ぜた「塩焼き消石灰」を使用する。
※スサ:麻やワラ、和紙などを原料とする短い繊維状の材料。漆喰の強度を高めるために使用する。
漆喰の種類
漆喰にはいくつかの種類があり、それぞれ特徴が異なります。
本漆喰
引用:アトピッコハウス
現場で職人が消石灰に糊とスサ、水を調合して練り上げる漆喰です。
単純に「漆喰」といった場合は、本漆喰を指します。
塗る前も塗った後も色は純白です。
土佐漆喰
引用:田中石灰工業
高知県の伝統的な漆喰です。
消石灰に1カ月以上発酵させたワラスサを混ぜ、数カ月~半年寝かせて作ります。
発酵させたワラの成分がつなぎとなるのでノリは入れません。
水に溶ける性質があるノリが入らないので雨に強く、厚塗りをしてもひび割れしにくいです。
塗る前は濃いクリーム色です。外壁に塗りつけた後は、紫外線の漂白効果によって数年かけて黄みがかった白色に変色していきます。
製品は全て練り上げた状態で出荷され、粉末状の製品はありません。
琉球漆喰
引用:沖坤
沖縄で作られてきた漆喰です。
生石灰に切ったワラと水を混ぜたものをお餅のようについてワラをすりつぶした後、数カ月熟成させたものです。
伝統的な沖縄の住宅には塗り壁がないため、屋根瓦を固定するために使用されてきましたが、現在では外壁に塗ることもあります。
既調合漆喰
引用:四国化成
漆喰メーカーが調合した製品で、現場で水を加えるだけで漆喰として利用できる粉末状のものと、既に練り上げたものがあります。
品質が安定しており、調合の不要が省けるために最も使用されている漆喰です。
地域性のある漆喰
伝統的な外壁仕上げ材である漆喰は、日本各地で独特の発展をしてきました。
そのため、素材や色付け、仕上げ方などの違いによって多様なバリエーションがあります。
たとえば、熊本には身を取った後の貝殻を焼いた灰で作る「肥後漆喰」があります。
風土に根差した材料や仕上げ方が地域の文化として受け継がれています。
漆喰関連製品
日本古来の製法では用いられない材料も使っている「漆喰に似た」製品です。
漆喰の成分や工法には厳密な定義がないため、石灰が入っているだけで「漆喰」としている製品や、合成樹脂を混ぜた製品も存在します。
漆喰関連製品の場合、特徴や耐久性の面で漆喰とはかけ離れていることもあり、注意が必要です。
漆喰外壁の施工方法
かつての漆喰は土を厚く塗り重ねた土壁の仕上げに用いられていましたが、現代の住宅に土壁が採用されることはまずありません。
現在では、モルタル下地の上に漆喰を塗装するのが一般的です。
施工手順(概略)
- モルタルの下地にプライマー(下地と漆喰を密着させる接着剤の役割を果たす塗料)を塗布する。
- 下塗りとして、漆喰に砂を混ぜた「砂漆喰」を塗る
- 上塗り漆喰を塗る
- 必要に応じて、防水性を持たせるために撥水性のコーティング剤を塗る
工法によっては、「ノロ」と呼ばれる漆喰から繊維質の材料を取り除いた「仕上げ用漆喰」を、上塗り漆喰の上に塗る場合もあります。
完全に漆喰が乾く前に雲母の粉を打ち、ツヤを出す仕上げ方法である「磨き仕上げ」もあります。
漆喰の塗装作業は全て「左官」と呼ばれる職人の手作業です。
作業工程が多く工期もかかるため、漆喰の外壁は施工費用が高くなるのです。
漆喰外壁のメリット
昔ながらの漆喰が現代においても関心を持たれているのには、以下のような理由があります。
化学物質を含まない
天然の原料だけで作られた漆喰は、健康に悪影響を及ぼす化学物質を含まず、健康的な外壁材です。
室内の壁に利用した場合には、室内の化学物質を吸着する作用があることも知られています。
ただし“漆喰”と謳っている製品の中には、施工がしやすいように合成樹脂塗料などを混ぜている製品もあるので、注意が必要です。
耐久性が高い
漆喰は合成樹脂塗料のように直射日光で劣化せず錆びないため、耐久性の高い外壁材です。
ただし、メンテナンスが完全に不要というわけではないので注意が必要です。
耐火性能が高い
主原料が無機物の消石灰である漆喰は不燃材料であり、耐火性能に優れています。
外壁内部の湿気を外に逃がす
漆喰には湿気を吸収し放出する調湿機能があります。
外壁塗装に漆喰を使用すると、外壁内部に湿気が溜まらず、内部結露を防止する効果が期待できます。
汚れにくく衛生的
漆喰の外壁表面には静電気が発生しないため、ほこりが付きにくい特性があります。
漆喰の主原料である消石灰(水酸化カルシウム)は強アルカリ性でカビが発生しにくく、害虫の繁殖を防止します。
デザイン性が高く、オリジナリティのある外壁になる
職人がコテで塗って仕上げる漆喰の外壁は、さまざまな模様をつけることが可能です。
他に二つとないオリジナルティのある外壁を実現できます。
漆喰外壁のデメリット
魅力的な長所を持つ漆喰ですが、一方で以下のようなデメリットもあります。
防水性能が低い
漆喰の防水性は低く、雨が当たり続けると水分を吸って強度が弱くなります。
近年、軒を出さない屋根は珍しくありません。
しかし、外壁を漆喰仕上げにするには、伝統的な軒の出がある屋根にしたり、雨のかかりやすい部分には漆喰を使わないなどの対策が必要です。
施工できる職人が少なくなった
漆喰の施工には高い技術を要します。
新築住宅の8割以上で外壁にサイディングが採用されている現代では、漆喰を扱える職人は減っています。
漆喰の外壁にしたい場合は、まずは職人を探すところから始める必要があるのです。
ヒビ・傷が生じやすい
漆喰は乾燥する過程で収縮し、ヒビが入ることがあります。
セメントや金属ほどの硬度はないため、傷がつきやすい欠点があります。
ただし、ヒビも傷も補修が可能です。
メンテナンスをこまめに行うことできれいな漆喰外壁を維持することができます。
工程が多く、施工期間が長いために施工費が高くなる
何度も手作業で塗り重ねて仕上げる漆喰外壁は、工程が多く施工期間が長くなるため、施工費用も高くなります。
費用の比較は以下のようになります。
- 漆喰仕上げ:7,500円/㎡~
- モルタル仕上げ:5,000円/㎡~
- 窯業系サイディング:4,500円/㎡~
- 金属サイディング:5,000円/㎡~
※養生・足場代別
※金額はあくまでも目安で、使用する材料や施工方法によって異なります。
昔ながらの漆喰とは異なる製品も多い
原材料に石灰が入っているだけで「漆喰」と謳う製品も流通しており、本来の漆喰の機能が期待できないこともあります。
漆喰の外壁を検討するなら、使用する漆喰の成分や特性について施工業者に確認を取ることが必要です。
漆喰外壁に生じるトラブル
漆喰の外壁は耐久性が高いですが、メンテナンスが不要なわけではありません。
以下のようなトラブルが生じる恐れがあることを知っておきましょう。
汚れ
「汚れにくい」漆喰の特性と矛盾するようですが、漆喰は白いために汚れが目立ちます。
土ほこりや砂
表面に凸凹の模様をつけて仕上げたり、ざらざらした触感の仕上げにした場合、汚れがつきにくい漆喰でもほこりが溜まりやすくなります。
多彩な表現が可能な漆喰ですが、汚れやすい屋外の外壁では模様をつけず、汚れのつきにくい仕上げ方法を選択するのが無難です。
コケや藻、カビ
塗りたての漆喰(水酸化カルシウム)は強アルカリ性のため、コケや藻、カビが繁殖することはありません。
しかし、時間が経つにつれて水酸化カルシウムが炭酸カルシウムに変性していくと弱アルカリ性になり、抗菌効果は薄れます。
補修で漆喰を塗り直した姫路城が白過ぎると話題になりましたが、補修前に黒かった部分は実はカビだったとのこと。
時間が経つにつれてまたカビが繁殖していくのです。
このニュースからも分かる通り、メンテナンスをしなければ漆喰の外壁にもカビが繁殖してしまうのです。
以下のような状況・環境ではコケや藻、カビが生えやすくなるので注意が必要です。
- 汚れが溜まり、コケや藻、カビの養分になってしまう
- 風通しが悪くじめじめしている
- 日当たりが悪い
※出典:マイナビニュース 大修理後の驚きの白さ! “白すぎ城”とも言われる姫路城が白すぎない理由
ヒビ
前章で紹介した通り、漆喰にはヒビが入りやすい特性があります。
現代建築で漆喰外壁を採り入れる場合、モルタル下地の仕上げとして採用されることがほとんどです。
漆喰は弾力性がないため、モルタルが乾燥・収縮する動きについていけず、ヒビが入るのです。
とくに、サッシやドアの隅は地震などの揺れで圧力がかかりやすいため、ヒビが入りやすいのです。
傷
窯業系サイディングやモルタル外壁と比べて、漆喰の外壁はそれほど硬くありません。
そのため、硬いものがぶつかったり尖ったものでひっかくと傷がついてしまいます。
剥がれ
正しく施工された漆喰は耐久性が高いですが、漆喰の扱いに不慣れな業者が誤った方法で塗装すると、早期に剥がれることがあります。
DIYでできる漆喰外壁のメンテナンス
「100年持つ」ともいわれる漆喰の外壁ですが、きれいな状態を保つためにはこまめなメンテナンスが必須です。
この章では、DIYでもできる漆喰外壁の補修方法について紹介します。
部分的な汚れ
部分的な汚れであれば、濡らして硬く絞った布でこすって落とします。
それでも消えない場合、目の細かいサンドペーパーをかける方法もあります。
これは漆喰を削ることになるので、やり過ぎないように注意してください。
コケや藻、カビの除去
台所用の塩素系漂白剤やカビ除去剤を塗布し、しばらく置いた後に水をかけて流します。
外壁専用のコケ・藻・カビ除去剤の中には、漆喰では使用不可の製品があるので注意してください。
また、酸性の洗剤はアルカリ性の漆喰を傷めるので、使用してはいけません。
ヒビ割れ・傷
ヒビや傷が生じやすい漆喰ですが、最近では初心者でも簡単に扱えるキットが販売されており、DIYでも比較的補修しやすい外壁です。
市販の補修用漆喰で傷を埋め、表面を平らにならすことで、ヒビも傷もほとんど目立たなくなります。
補修用の漆喰はすでに練ってあるもの、粉末状のものがあります。
練ってあるものであればすぐに使用できるので、より手軽に補修が可能です。
漆喰の補修でDIYをおすすめしない場合
漆喰の剥がれ
漆喰を塗って数年で剥がれる場合、下地や施工方法に問題がある可能性があります。
DIYで対処しても改善しない恐れがあるので、まずは施工業者に相談をしましょう。
古い漆喰であれば、剥がれ始めると広範囲に剥がれが広がることがあるため、全て剥がして漆喰を塗り直す方がよいでしょう。
高所の補修
はしごなどを使っての補修は大ケガにつながります。
高所の補修は無理に行わず、専門家に任せましょう。
専門業者に依頼する漆喰外壁の補修方法
DIYで補修できない場合、漆喰外壁の補修は専門業者に依頼することになります。
この章では、専門業者が行う漆喰外壁の補修方法について紹介します。
塗り替え
漆喰を新しく塗り替える方法です。
既存の漆喰外壁の状態次第で、部分的な塗り替えで対処できる場合と、全て塗り替える場合とに分かれます。
- 漆喰を剥がす費用:1,500円/㎡~
- 漆喰を塗り直す費用:5,000円/㎡
※養生・足場代、撤去した漆喰の処分費別
※金額はあくまでも目安です。
下塗りの漆喰もやり直す場合には更に費用がかかることもあります。
漆喰の上から塗料で塗装
漆喰を塗る左官屋がいない、もしくは費用が高い場合には、漆喰外壁を塗装する補修方法もあります。
一般的な塗料は漆喰の上に塗っても早期に剥がれてしまうため、漆喰の上に塗装できる塗料は限られます。
以下の塗料は、漆喰外壁の塗装で比較的よく使用されている塗料です。
- 関西ペイント「アレスシックイ」:3600円/㎡
- 日本ペイント「ケンエース」:1,550円/㎡
※養生・足場代別
※金額はあくまでも目安です。
どちらの塗料も、漆喰と塗料を密着させる下塗り剤を十分に漆喰に染み込ませた上で施工することが重要です。
また、上記の塗料を使った場合でも塗装が剥がれる可能性があるため、施工業者と十分に相談をした上で塗装を行いましょう。
カバー工法
既存の漆喰外壁を金属系サイディングで覆う施工方法です。
既存の漆喰を剥がす手間や費用がかからず、工期も比較的短時間で済みます。
金属系サイディングによるカバー工法の費用概算:150万円~
※平均的な30坪(外壁面積150㎡)の住宅での概算
※養生・足場代なども含むリフォーム費用総計の概算
※金額はあくまでも目安です
この方法では漆喰らしい外観や特性は失われますが、こまめなメンテナンスをしなくてもきれいな状態を維持できる外壁に変更したい場合の解決策として有効です。
ただし、既存の外壁の劣化が進行している場合など、カバー工法ができないケースもあります。
モルタル下地からサイディングに変更
漆喰外壁のメンテナンスが難しくなった場合のもう一つの解決策として、モルタル下地からサイディングに変更する方法があります。
カバー工法が難しい場合や古い外壁を残しておきたくない場合に有効です。
漆喰外壁をモルタル下地から撤去してサイディングに変更する場合の費用概算
平均的な30坪(外壁面積150㎡)の住宅で200万円~
※養生・足場代なども含むリフォーム費用総計の概算
※金額はあくまでも目安です
まとめ
漆喰の外壁には、費用が高いことや施工できる職人が少ないなどのデメリットもあります。
それでも、正しいメンテナンスを行えば美しい外観を長期にわたって保つことができる、優れた外壁といえます。
この記事が漆喰外壁の住まいを検討している人や、漆喰外壁のメンテナンスで悩んでいる人の参考になれば幸いです。
漆喰問わず外壁を塗り替える際には、ぜひいえふくにご相談下さい。実績豊富な施工業者が、心をこめて皆さまの住まいを守るお手伝いをします。