執筆者:鈴木弘樹(いえふくライター)
「自宅を建てて10年。屋根にコロニアルと呼ばれる屋根材が使われているが、屋根の葺き替えって必要?費用はどれくらいだろう?」といった疑問をお持ちではありませんか?
今回の記事は、コロニアル屋根の葺き替え工事について、費用や工事内容を解説します。あわせて、「塗装」や「重ね葺き」と呼ばれる工事もご紹介。
「住宅にあまりくわしくないけど、屋根のリフォームに興味がある方」に向けた記事になっています。ぜひ参考にしてみてください。
コロニアルとは、「スレート」と呼ばれる屋根材の製品の商標名です。1961年に屋根材のトップメーカーだった「クボタ(現ケイミュー)」が発売しました。
当時は、コロニアルの市場シェアが高く、「スレートといえばコロニアル」と呼ばれるほど。
ここでは、コロニアル屋根の葺き替えについて、気になる「費用」「工事内容」「工事期間」の3つをご紹介します。
コロニアル屋根の葺き替え費用は、既存の屋根材や住宅の状態によって変わってきます。
既存の屋根が、コロニアル・一般的な瓦である「釉薬(ゆうやく)瓦」・金属製の「ガルバニウム鋼板」のいずれかの場合、下記を目安にしてください。
既存の屋根が一般的な釉薬(ゆうやく)瓦の場合、費用は比較的高額になる傾向があります。撤去する枚数が多く、重量があるため、撤去するにも手間と費用がかかるためです。
ご自宅にアスベストが使われている場合には、処分費が高額になるので注意しましょう。アスベストを除去する際に、アスベストが飛散しないような工事が必要だったり、処分するにも特別な施設で処分してもらう必要があったりするためです。
コロニアル屋根の葺き替え工事は、以下の手順になります。
上記のように、まず足場を設置し、既存の屋根材を撤去していきます。
撤去した後、下地の劣化状況を確認し、修繕・補強を行います。下地は「野地板」と呼ばれる木の下地材と、雨水の侵入を防ぐ「防水シート」で構成されていて、屋根の基礎にあたる部分になります。
防水シートが劣化し、裂けていれば新しいものと交換します。
施工完了後、足場を解体し、工事終了です。
葺き替え工事は、一般的に6~15日程度かかります。足場設置からはじまり、既存の屋根材の撤去や新しい屋根材の設置を経て、足場解体で工事が完了します。
工事期間は、屋根の状態や天候によっても変わりますので、スケジュールを組む際にはご注意を。
葺き替え工事のほかに、外壁塗装などを同時に行う場合は工事期間が延びますので、事前に業者と相談しておきましょう。
コロニアルの葺き替え時期は10~35年程度。年数が10~35年と幅があるのは、日当たりや水吐けの良し悪しで、屋根の環境によって劣化の進行に差があるからです。
一般的に10年経過すると、屋根の劣化が目立ちはじめます。雨風や紫外線により、色が薄くなったり、表面がボロボロになってきたり、見た目にも変化が出てきます。
屋根のリフォームを検討するきっかけは人それぞれ。たとえば、「屋根の保証期間がそろそろ終了する」や「業者にリフォームを勧められた」といったきっかけで検討する方もいます。
屋根材にはコロニアル以外に、「瓦」や「ガルバニウム鋼板」と呼ばれるものがあります。
屋根材 |
葺き替え時期(耐用年数) |
備考 |
瓦(セメント瓦) |
20~40年 |
10~20年に1度、塗装が必要。 |
ガルバリウム鋼板 |
30~40年 |
10~20年に1度、メンテナンス(シーリング補修や部分補修、塗装、防水シート交換工事)が必要。 |
※セメント瓦とは、70年代~80年代に流行したセメント製の屋根瓦です。陶器瓦より安価で、製造しやすいことから広く普及しました。
※ガルバニウム鋼板は金属製の屋根材で、軽量であることから近年急速に普及して来ている屋根材のひとつです。
コロニアルは、屋根材のトップメーカーである「ケイミュー株式会社」が開発したスレート(セメントと繊維質の素材を原料としていて、練り混ぜた生地を薄く成形し、加圧したもの)屋根材で、その商品名になります。
下記では、コロニアルについてくわしく解説していきます。
コロニアルは、「カラーベスト」や「スレート」と呼ばれる屋根材と同じものと思って差し支えありません。
いくつかのメーカーが「スレート」と呼ばれる屋根材を作っている中で、ケイミューの商品であるコロニアルは市場シェアが高かったため、コロニアルがスレートのことを指すようになったのです。
カラーベストも、ケイミューの前身であった「クボタ」が発売したスレート商品です。
グラッサとは、スレートの表面に「グラッサコート」と呼ばれる紫外線に強い加工がされているスレート屋根材で、ケイミューの主要商品となっています。
グラッサコートが施されているスレート屋根には、基本となる「グラッサシリーズ」のほか、赤外線の反射率を大幅に向上させた「遮熱グラッサ」や、グラデーションの発色・光沢を長期間キープできる「グランデグラッサ」といったシリーズがあります。
「特殊な加工がされているスレート屋根材」と理解しておけば、問題ないでしょう。
コロニアルの耐用年数は20年前後といわれています。商品によっては、特別な塗料を使うことで、30年以上きれいな状態が続くとされているものも。
しかし、劣化が進むと防水性や耐久性は少しずつ失われます。長く、きれいな状態を維持するには、劣化が激しくなる前のメンテナンスが必要になります。
コロニアルのメンテナンスは、葺き替えのほかに、「塗装」や「重ね葺き(カバー工法)」といった方法があります。それぞれの特徴を説明します。
屋根のメンテナンスとして、1番ポピュラーな方法。雨漏りしないよう防水効果を持続させるために行います。下記の条件の場合、塗装工事がおすすめです。
塗装はほかの工事に比べ、工事費を抑えることができます。葺き替えの場合、既存屋根の撤去や防水シート交換などが必要ですが、塗装工事の場合は必要ありません。
屋根材自体の劣化が激しい場合、塗料のくっつきが悪くすぐに塗装がはがれる恐れが高いので、塗装は難しいです。
外壁塗装を検討しているのであれば、同時に屋根塗装も行うことをおすすめします。塗装工事が1度で済み、足場代や塗料を安く抑えることができるからです。
重ね葺き(カバー工法)は、既存屋根の上から、新しい屋根を取り付ける工法のこと。
下記の条件の場合、重ね葺きをおすすめします。
工期をなるべく短くしたい場合は、重ね葺きがおすすめです。
葺き替えの場合、工期は1ヶ月程度かかることがあります。一方、重ね葺きの場合、1~2週間程度で工事は完了するので、はやく工事を終わらせたい方向きです。
自宅の屋根材にアスベストが使用されている場合、重ね葺きを検討しましょう。アスベストは切断や破砕をしない限り人体に影響はありません。しかし、葺き替えでアスベストを処理することになると、安全に処理するために費用がかかります。
さらにまた、工事の際にアスベストが飛散して、近所に迷惑をかけてしまう可能性も。重ね葺きをすれば、飛散する心配もなく、アスベストを抑え込むことができます。
重ね葺きは、既存屋根を上からふさぎ込む工事になります。既存の屋根材を動かすことなく施工するので、屋根材の下で防水シートや野地板が劣化していても、補修することができません。下地に劣化がある場合は、ちがう方法を検討しましょう。
コロニアルのメンテナンスを行うお客様は、あわせて外壁塗装を行う方が多いです。
2つの工事が1度で済みますし、足場代が余計にかかることもありません。
足場代は30坪程度2階建ての平均的な一戸建ての場合、15万円前後かかります。葺き替えや屋根塗装など足場を組む必要がある工事を行う場合、外壁塗装などほかの足場を設置する必要がある工事といっしょに検討することをおすすめします。
スレートは何社からのメーカーから販売されており、いくつか種類があります。その中で、「アーバニー」と「パミール」と呼ばれる商品をご紹介します。
アーバニーとは、旧クボタが取り扱っていたスレート屋根の商品です。1982年から2005年までモデルチェンジしながら販売されてきました。当初はアスベストを含んだ商品でしたが、アスベスト規制により「ニューアーバニー」、ノンアスベスト商品の「アーバニーグラッサ」と名称が変更した歴史があります。カラーベストの中でも高級商品として位置づけられ、屋根は60cm角でウロコのようなデザインをしています。現在、アーバニーの販売はされていません。
パミールは1996年から2008年にニチハから販売されたスレート屋根材です。パミールは施工後10年で、不具合が見つかり、評判があまりよくありませんでした。現在、生産は中止され、販売はされていません。
コロニアルがここまで日本で普及し、人気になった理由はコロニアルに次のような特徴があるためです。
コロニアル屋根は定期的なメンテナンスが必要です。
仮にメンテナンスをしないと、下記のようなことになる恐れがあります。
定期的なメンテナンスをしないと、劣化が激しくなり、補修・修繕に費用がかかってしまいます。
早めのメンテナンスが、住宅をきれいに長持ちさせる秘訣です。
屋根のリフォームは「葺き替え・重ね葺き・塗装」の3つがあります。それぞれに特徴があるので、お悩みにあわせて検討しましょう。
屋根の状態やお客様によって、おすすめの工事は変わってきます。迷ったら業者に相談してもいいですね。
屋根の葺き替え工事にあたって、事前に知っておくと役に立つことがいくつかあります。建築確認の申請、リフォーム補助金、アスベストについて紹介します。
葺き替え工事にあたって、建築確認(建物が建築基準法に適合しているか審査すること)の申請が必要かどうか、ケースによって変わってきます。
地域によって、条件がちがう可能性があります。工事を依頼する業者に相談するか、役所の担当窓口に確認しておきましょう。
補助金が使えるケースは2パターンあります。
1つ目は、瓦屋根からガルバリウム鋼板への葺き替えリフォームなど、「耐震対策として屋根を軽量化した」場合。
2つ目は、屋根の葺き替えによって「建物の断熱性が向上した工事」をした場合です。
上記の2パターンは、国土交通省が発表している「長期優良住宅化リフォーム推進事業」と呼ばれる制度の対象になります。
「長期優良住宅化リフォーム推進事業」の制度は国が実施しています。ほかにも、都道府県や市区町村が独自で実施している補助金がありますので、検索してみるといいでしょう。
参考サイト:国土交通省
2004年以前に建てられた住宅の場合、使用されている屋根材にアスベストが含まれている可能性があります。
「重ね葺きができない」または「新しい屋根材に葺き替えたい」と考えていて、現在の屋根材にアスベストが含まれている可能性がある場合、お住まいの役所や工事業者に調査してもらい、処分してもらいましょう。
工事の流れは以下になります。
除去工事のあいだ、1週間程度ご自宅での生活ができなくなります。アスベストが飛散して、吸い込む可能性があるためです。
事前に仮住まいやホテルをとっておくと安心ですね。
※「石綿」と「アスベスト」は同一のものです。
今回は、コロニアル屋根の葺き替え工事について解説しました。
屋根のリフォームといっても、塗装・葺き替え・重ね葺きなどさまざまです。それぞれの特徴や向き不向きを考えて、お客様にあったリフォームを検討してみましょう。
建築確認や補助金の申請など、工事以外にも手続きが必要なケースがあります。業者と相談しながら、スムーズに工事を進めていきたいですね。
いえふくは外壁・屋根塗装のほか、屋根の葺き替え・重ね葺きにも対応しています。お気軽にご相談ください。
お問い合わせ